平成20年4月


                               最近に於ける借地・借家の動向
                                          − 地代・家賃・更新料・新解決手法を通じて −


1.はじめに
(1)地代の変化に対応する為に
昭和62年7月をピークに横須賀の地価はバブルの崩壊へと進み、約16年目に入って、一部商業地に上昇がみられ、平成19年7月の地価調査では、横須賀での上昇の傾向が出始めた所である。これは、従来の地価は値上りするものとされて来た神話とは、やや異なる形で分析する事が出来る。

@ 従来の地価値上りと現在の値上りの社会的、経済的、行政的背景が異なります。(少子高齢化現象)

A フリー、ヘアー、グローバル化の世界的広がり、外国資本が日本に入り易くなった事に依る関連法律等の改正、これ等の改正が経済に与える影響、中央集権に基づく一極集中が地域格差を生じさせ(東京一極集中)、地価の上昇も今後の比較方式(取引事例、賃料事例)から、収益方式への考え方への転換を意味している事。

B あらゆる分野で法改正が進み、従来のビジネスや商売のやり方では、商売が成立たなくなって来た時代の到来を意識し、変革に対応した自分なりの計画を作り、実行していかなければならなくなって来ました。(外資の不動産の証券化の為の需要による地価バブル的様相を呈している。又、サブプロームローン問題が、今後地価にどの様な影響を与えるのかの問題等。)

以上の事を踏まえて、不動産分野についても大きな変化が出始めております。特に借地関係、地代と更新料関係、家賃と更新問題、家屋明渡と立退料問題、これ等を考慮しながら、今後の不動産に関連する新ビジネス、いわゆるADR法の和解方式の応用方式等、現実に採用して来たケースにも言及して、本日の講演の主題としたいと存じます。

2.民法と旧借地法、旧借家法等と新借地借家法との関係
(1)添付資料の「法体系に於ける借地借家法の位置付」の見方について説明致します。

(2)流れ図
@ 憲法第29条に(財産権)→点線囲んだ部分 (A) (1, 2, 3)
下に伸び囲いの中の民法の大原則(C) (判断基準・・・物指)

A 他方、6法と謂れている民事法の中の (B) 「民法」の総則について
右の囲いとの関連を判断基準として個別の問題の妥当性を考慮する必要がある。

B 以下 (B),(D),(E),(F),(G) とも関連し、特に(F) から左へ2点線の通り、新借地借家法(旧借地法、旧借家法、建物保護法を一体として新法が構成された。)特に重要な事は下記C以下の通り。

C 定期借地権、定期借家権が新設された事。(必ず土地がもどって来る。)・・・(旧借地法、借家法が機能しなくなった矛盾を解消する事が目的)

D 新法の条文の中にも任意規と強行規定のある事。(どこまでが任意に出来、どこまでは任意に合意しても法の条文に従わなければならないか、・・・・始めから合意がなかったものとされる。)

E 新借地借家法の最後の部分に「附則第3条以下4条が特に重要で平成4年8月1日以前の借地契約、借家契約関係は旧法の適用が生きている事(いわゆる借地権が強い)。」

F 上記Eから派生して、流れ図の(I) → (J) の個別的問題に至る訳で、次に個別問題について事例を上げながら説明していく。



3.個別問題と新解決の手法
(1)地代と更新料問題
@ 旧借地法関係の地代の値上げに関しては、従来の裁判所の抑制的な方向性から、妥当性のある賃料の値上げに答える方向性が出たと言う確度の高い情報がある事を先ずお知らせしておきます。
A 但し、旧借地法に基づく賃料と新借地借家法の賃料を考える場合、借地権価格の存在がある事、他方は必ず返還される事に依る本質的な違いがあります。新法に依る賃料は、市場性の重視がポイントとなる。借りる方がいくらなら採算性に合うかは、内部的に分析し、持っている場合が多い。(本質的には、統制(間接統制を含む)原理と、市場の原理の相克)

B 地代と更新料について
 地代は法的請求権があるので、経済状況の変化、固定資産の上下、その他比隣の賃料に比して不相当になった場合は、賃料の値上げが出来る事になっております。(賃料値上げの意思表示、配達証明付)但し、文章の書き方が重要、最近まとめた事例Aについて、説明致します。(但し、業者に管理契約をしている場合は、契約書の内容に依って、どう処理するかは格別です。)

事例A
 本件は地主より、始めに賃料の値上げをしたいが5地点について、カウンセラー業務としての賃料の「意見書」の依頼を受けて、従来の賃料、経済的賃料、妥当性のある賃料等求め、出て来た賃料を先ず地主本人から借地人宛に賃料値上の内容証明を出し、「但し、河村不動産鑑定事務所に期日を定めておいでいただき、話し合いでまとまれば、必ずしも値上の通知の額にはこだわらない旨書き添えた上で、賃料が従前と同額の場合は、更新料の額がいくらか、いくらになれば、この額等3〜5通りの分析で記入したものを見せて、借地人に選べる様に話を付けたケースがあり、賃料の大幅な値上げと更新料30万円で合意したケースがあります。」(但し、無断増改築があり、これの後払的なものとしての性格をもった承諾料30万円)

現行賃料 
支払賃料   年103,200円 月 8,600円 u月86.7円 坪月286.7円
実際実質賃料 年122,208円 月10,184円 u月102.7円 坪月339.5円

合意賃料
 年額支払賃料  180,000円 月15,000円 u月151円 坪月500円
 上記増改築承諾料(後払)30万円を受領した。

注1. 更新料は法的請求権がないので、借地人に支払わせる様に誘導する  必要があり、ここの所の計算が複雑です。


注 2. 適切な支払賃料と更新料の組み合わせ
 評価実質賃料を基準とした場合の、適切な支払賃料と更新料の組み合わせは下記の通りとなる。更新料については、平成19年現在の10年国債の平均利回りを採用し、運用利回り1.7%、償却期間20年として計算している。
(年賦償還率採用)




事例B
 評価実質賃料と評価支払賃料との関係は、下記の式によって求められる。運用利回り1.7%、償却期間20年の場合の年賦償還率は、「0.0594」である。

〔評価実質賃料〕=〔評価支払賃料〕+〔更新料〕×〔年賦償還率 0.0594〕


注3. 更新料については、添付した資料(ホームページより印刷)を御参照下さい。
(2)家賃と更新料
  @ 土地の場合と性格が異なり、過去に権利金として授受されたものが、「裁判に依り権利を売ったのだから借家人は、第三者に譲渡が出来る。」とした判決が出た為、保証金とか、礼金とか、2年毎の短期契約にして更新料を支払えと言う形に変形して来たもので、考え方としては、賃料の一部とみなされています。

  A これも業者が何とかビジネスにしようとして需要の強い東京、横浜、横須賀等で業界に於て通用して来たもので、需要が減退している地域では、通用しなくなって来ております。
バブル崩壊後、消費者保護法が制定されたり、平成20年3月犯罪収益移転防止法が施行され、特定事業者が拡大、宅地建物取引業者も本人確認、取引記録の保存等規制されました。この事は、従来の方法から(行政指導)、法治国家への転換(事後規制、勧告とか行政罰)がなされて来ている為、地主としての要請も合法的妥当性のある範囲でなければ、トラブルの発生へと移行しやすくなって来た事に注意する必要があります。(地上げと組織暴力団との係りに関し、最近逮捕者が出た事は、これ等の事を実証している。)

B 更新料問題は増改築や、用途変更、権利譲渡と関連して法的請求が出来る場合に限定し(本来更新料ではなく承諾料)、家賃の値上げは需給関係によってきまり、実質的に借家人が高いと思えば移転してしまう場合が多々あると言われております。

C その他はホームページを添付致しましたので、参照して下さい。



(3)新ビジネスの手法
@ 家賃は新しい物件が出て来るたびに、旧アパート等から新しいマンション 等へ顧客は流れます(利便性、快適性優先)。従って、可能性のあるのは地代の値上げか、借地権と 底地の対等な条件で50%:50%での交換か、地主が買い取っても良いと言いながら、10%などとひどいケースが某専門家を使って出始めた(不動産分野の専門家でない人)。又、借家人居付の場合の条件付処分とか、買取り等が考えられますが、当事者双方が「○○○したい」事について、「決定を専門家にまかせ、その決定に従う旨の合意」(民法上の和解の合意方式)が出来れば(本人同志の内諾なり、その内諾を契約書なり合意書に作り上げる事自体、専門家の智恵が必要。)その合意書の中でその分野の専門家を使う方向で処理するなり解決する。(立退き問題、増改築問題、木造から鉄筋コンクリート造への条件変更等)裁判外紛争解決(ADR)の手法の応用的手法についてカウンセラー業務の一環としております。

A 次に相続が発生してからでは資料が不明であったり、時間的制約があったりで、問題が内在していても分りませんので、出来れば事前に自分の不動産に関する意見書(価格に関するカウンセラー業務報告書)を依頼する事に依って、どこに問題点があるか、明確になります。

B 新しい分野では、新規の場合は定期借地権設定契約として、20%〜35%(更地価格水準)の額を設定料(賃料の前払金)、地上権設定料とする場合、地代は0の場合又は固定資産税+若干の地代を授受して必ず返還される為の文書の作成(契約成立要件)を明確にしたものが必要です。

C 既存借地権から定期借地権への移行
 この問題は、事前に移行する事の内諾の上、合意で処理する為、借地権価格の清算をどうするか、第二に賃料として年々償却する様な「意見書」を合意で作り、第一賃料、第二賃料として償却する手法が理論的には考えられるが、非常に複雑な手法となります。

D 定期借家も既に法律が出来上っておりますが、町の業者で出来る方はごく少ないと思っております。

E 貸地がやや大きく、駅に近く、マンション等の利用が可能な場合に、共同でマンションを作り区分建物の登記をした上で、借地権の転貸を認める方向で2分の1を借地人と共同マンションを作り、転貸、(条件付転借権 要登記)の出来る様に合意する方向で処理し、2分の1の敷地分は地代を授受出来る様設定する。
(かなり複雑な契約となるが、小川建築事務所とは親しく仕事をさせていただいておりますので、この様な案件も新ビジネスとして行っていきたいと思っております。)(ミニ再開発の手法の応用)



四.おわりに
種々話して来ましたが、非常に変化が早く、なお複雑、多様になって来たわけで、従来の考え方では、とてもスムーズに賃貸借関係の処理も困難である事を認識していただけた事と存じます。今日の話を基本にそれぞれの財産をどう守り、どう処理していくか、よくよく御思案の程をお願いして、相談する事の重大性をも御了解いただいた事で本日は終りたいと存じます。
質問があればお受け致します。
 以 上